【戦国恋物語】出会いは突然風のように…
人影は振り向いた。


それはやはり、驚いたようにこちらを見る秀政だった。


「秀政っ」


わたしは嬉しさのあまり、彼の腕に飛びついた。


「うわっ」


途端に彼は声を上げると、慌てたように身を離す。


「え?なんで離れるの?」


秀政はさっと顔をそむけ、わたしのほうを見ようとはしない。


「秀政?」


久々に会えた喜びもどんどん萎んでいく。


こちらを見ようとしない秀政に、わたしは悲しくなって

「秀政……わたしと会うの嫌だった?」


それはほとんど涙声に近かった。


ぎょっとして振り向いた秀政は、わたしの涙でうるんだ目を見て焦ったようにかぶりを振った。


「ま、まさか、迦陵に会いたくないなんて、そんなはずないだろう」


そう言って、いつもの優しい目をして笑ってくれた。



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