【戦国恋物語】出会いは突然風のように…
二人きりになっても信長さまは寝転がったままだった。


わたしは仕方なく部屋の片付けを始めた。


もう修理できそうにもなく粉々になった茶碗のかけらを片付け、壷を直し、紙を集めた。


障子に開いている穴をいくつか見つけたけど、これは今はどうしようもないのであとで直すことにした。


そうやってこそこそ動いていると、信長さまがむくりと起き上がった。


「おい」


「はいっ」


急に声を掛けられ、わたしは飛び上がった。


「誰と会っていた?」


「ねねさまです」


「ねね?ああ、そう言えば、再三お前に会わせるように頼まれていた」


「久方ぶりにお会い出来たので嬉しかったです」


「何か言っていたか?」


「わたしの思うように生きよ、と言ってくださいました」


「……ふうん。秀政の所へ戻れとか、そういうことは言われなかった……」


「いいえ、そのようなことは。信長さま、気にされていたのですか?」


「いや別に、そんなことは……ただ、ねねは本気で怒ったら怖いからな」


「まあ」


わたしは信長さまの意外な一面を見たような気がして、可笑しくてくすくす笑った。


< 114 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop