【戦国恋物語】出会いは突然風のように…
幾度となく重ねられた口付けの果てに、わたしは疲れて吐息した。


「迦陵……」


切なげに揺れる信長さまの声。


始めて聞く声だった。


そして信長さまの唇はわたしの口を離れ、首筋へと落ちていく。


「あっ……」


経験したことのない感覚に、わたしは思わず信長さまを押しのけていた。


「どうした?」


乱れた呼吸を繰り返しながら信長さまが尋ねる。


今になって顔が熱くなるのを感じながら、わたしはどう答えていいのか分からず俯いた。


そんなわたしを見て苦笑しながら、

「すべて俺に任せばいい」


そう言って、またわたしの首元に顔を埋めてきた。


大好きな信長さまに求められて嬉しくないはずはないというのに。


でも。


でも。


わたしは気付いてしまった。


あんなにも心の中で吹き荒れていた風が、今この瞬間、ぴたりと止んでしまっているということに。


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