【戦国恋物語】出会いは突然風のように…
「信長さま」


わたしの渇いた声に、信長さまの動きが止まる。


「……わたし、尼さまにきつく言われたんです。女の体は特別だから、大事に大事にしなきゃいけないって」


「それで?」


「だ、だから……もうちょっと時間を掛けて、ゆっくり話し合って、それからでも遅くないかなって思うんです」


信長さまは大きな溜め息をつきながらわたしから離れた。


そして。


「もう行け」


と、信長さまにしては珍しく、随分感情を押し殺した声で言った。


「はい……また明日参ります」


そう言い置いて、逃げるように部屋を出た。


廊下を曲がった途端、ガチャンと何かの割れる音。


先程の茶碗の音とは比較にならない程大きな音だった。


あれは、床の間の壷だ。


絶対に。


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