【戦国恋物語】出会いは突然風のように…
その夜わたしは一睡もできなかった。


まんじりともせず夜を過ごし、自分の心を見つめ続けた。


思えば、こんなにも自分のことを考えたことがあっただろうか。


考えたつもりになっていただけで、わたしはただなおざりに過ごして来ただけだった。


それが結果として、秀政も信長さままでも傷付けていたのだとすれば、わたしは酷い女だ。


結局、学のない乞食に過ぎないのか、わたしは。


人並みになったと慢心でもしていたのだとすれば、なんと滑稽なことだろうか。


わたしは秀政に大切に思われる価値のない女だ。


信長さまに同じだなどと言って貰えるだけの了見などない女だ。


暁の光が障子窓を通して差し込んで来た。


ほの暗い暁闇の中で、お天道さまが上って来るのを待った。


やがて闇は薄れ、世界は光に照らされる。


そうであるように、わたしもまた、暁闇の先に見出だした面影をはっきりと見出だすことが出来るのか分からなかった。


ただ今思うのは、尼さまに会いたい。


それだけだった。


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