【戦国恋物語】出会いは突然風のように…
年明けて間もないその日。


一段と冷え込んだ朝にがたがた震えながら、わたしはようやくの思いで釜に火を付けた。


しばらくして火が起こると、わたしの強張った体もようやくほぐれてきた。


「ふう」と一息ついて、今度は青菜をまな板に乗せた。


献立は変わり映えない。


質素な精進料理だ。


とんとんと小気味よく青菜を刻んでいると、台所に尼さまが顔を出した。


珍しいことだからわたしは驚いて「あれ」と妙な声を出してしまった。


「どうなさったんです?」


「ねえ、迦陵」


尼さまは言いにくそうに切り出した。


「はい?」


「今日は少し出掛けてみない?」


「はあ?」


尼さまが外出するなど、それもめったにないことだった。


「何かあったのですか?」


怪訝に思いながらそう尋ねると、尼さまはまた言いにくそうにした。




< 127 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop