【戦国恋物語】出会いは突然風のように…
「あの、ね」


「はい」


「ちょっとついて来てもらいたいのよ」


尼さまは結局行き先を教えてくれなかった。


何度尋ねても行けば分かるの一点張り。


まさか尼さまを一人で外出させるわけにもいかなかったから、わたしは仕方なく承諾したのだった。


また青菜を刻み始めると、

「随分上手になったわね、迦陵」

と褒めてくださった。


「まあ、毎日のことですから」


わたしははにかんでそう答えた。


わたしが炊事全般をこなしていると知ったら、昔の仲間はどう思うだろう。


いやその前に、今のわたしを見て、わたしだと分かるだろうか。


彼らは骨と皮だけのわたししか知らないのだ。


ふっくらと肉付きも良くなり、なんとなく女性らしい身体つきにもなってきているから、きっと分からないに違いない。


彼らは今も、食うや食わずの生活をしているのだ。


そう思うと、人の運命のなんと稀有なことか。


けれどそのあと尼さまに連れて行かれた先で、わたしはそれ以上に自分の運命の不思議を知ることになる




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