【戦国恋物語】出会いは突然風のように…
五月晴れの陽光が眩しい。


暑くて、倒れそうだ……。


虚ろなわたしは俯いたまま、お天道さんが空のどこにいるかも知らないで、土の露わな小道を歩いて市場へと向かっていた。


その日暮しのわたしは、時に生まれたことの意味さえ見失ってしまいそうになるくらいの、人として最低の暮らしをしている。



俗にいうコジキだ。



親の顔さえ知らず、生まれて10年だか何年だか、確かなことは何一つ分からない。


いや、確かなことは一つだけあった。


それは、こんな最低な暮らしでも生きていられるということだ。


そう。


わたしは生きている。


けれど、ただそれだけだ。


それ以上はない。



この場で息が止まったって構わない。


それぐらいの価値しかない、命だった。


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