【戦国恋物語】出会いは突然風のように…
ぼんやりとして、覚束ない。


どこか別の場所にいるようだった。


不意に膝に置いた手を軽く叩かれた。


はっと我に帰ると、目の前には尼さまがいた。


「どうしたのです?ぼんやりして。そなたらしくないわね」


「すみません……」


「……堀どのが尾張に戻られて、寂しいのでしょう?」


分かっていますよとでも言うように頷く尼さまに、わたしは素直に首を縦に振った。


もうわたしは、尾張がどこにあるかも、秀政が何故京にいたのかも知っている。


全て尼さまに教えてもらった。


まだ尼さまの元で教養を深める必要があるということで、わたしはもうしばらくここにいることになった。


でも。


「ここだけでなく、別な土地で多くを見聞きすることも、そなたには必要なことです」

という尼さまの一声で、わたしはいずれ尾張に行くことが決まっている。


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