【戦国恋物語】出会いは突然風のように…
いたのかどうかさえも分からない者のことだ。


そう言うと、尼さまは淋しげに笑い、

「親がいたから、あなたがこの世にいるのです」

と言った。


それはそうだ。


誰かが産み落としたのでなければ、わたしはここにいない。


「その不思議に感謝せねばならぬ」


尼さまの話はいちいち難しい。


頭を使わなければ容易に答えが出てこない。


頭を使うなんて、一番わたしが苦手なことだ。


こんな時秀政がいれば助けてくれるのに……。


不思議?


なんのことだ?


親がいて、わたしがいる。


顔も知らない親。


温もりも覚えていない親。


そんな親でもいたから、わたしがいる。

それが、不思議?


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