【戦国恋物語】出会いは突然風のように…
「何がそうなんだ?教えろ」


「いや、教えない」


「え~」


わたしが抗議の声を上げたのと同時に、彼が掛物の下に潜り込んだ。


「これでいいんだろう?」


「ん、うん、それはそれでいいけど……」


思惑通り彼が隣に来たにもかかわらず、わたしは腑に落ちなかった。


「なあ、教えてくれよ」


再度懇願したけれど、彼は何も答えてくれない。


「いつか教えてくれよ」


いつもならわたしの知らないことがあればすぐに教えてくれる彼だもの。


きっとわたしが知るべき時が来れば教えてくれるはずだった。


「秀政。手、繋いでもいいか?」


わたしは彼のぬくもりをもっと身近に感じたくて、彼の左手にそっと触れた。


彼は一瞬びくっとして手を放したけれど、すぐに思い直したようにわたしの手に手を重ねてくれた。


「ああ、秀政は本当に温かいね……」


「迦陵」


「何?」


わたしはすでにうとうとしながら彼に答えた。


「お前はずっとそのままでいろ。そのままのお前でいいから……」


「うん、分ったよ」


わたしは秀政の言葉の意味を深く考える間もなく、眠りに落ちてしまっていた。




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