【戦国恋物語】出会いは突然風のように…
殿の足は速い。
わたしは追いつくこともできず、かなり後ろを必死の思いでついていった。
庭を突っ切り、やがて城山にうっそうと茂る林の中に入って行った。
いったいどこに行くのか。
皆目見当がつかない。
殿の行動は予測不能だった。
しばらく行くと木々がなくなり、ぱっと開けた空間に出た。
「あっ……」
小さく声を上げたわたしを振り向くと、殿は口を小さく歪めて微笑んだ。
「お前が好きなら、ここに連れて来てやろうと思ってな」
そこには一本、忘れ去られたように咲く山桜の木があった。
ねねさまと見た桜と同じように、はらはらと花を散らせていた。
「見てみろ」
木の側に立ち、殿の指差した方を見ると崖になっていて、そこからは城下が一望できるようになっていた。
「ここは俺しか知らない。俺だけの場所だ」
この清州の城に来てからずっと、城を抜け出してはこの山桜の下で考えを巡らせてきたのだという。
「そのような場所にわたしを?」
わたしは追いつくこともできず、かなり後ろを必死の思いでついていった。
庭を突っ切り、やがて城山にうっそうと茂る林の中に入って行った。
いったいどこに行くのか。
皆目見当がつかない。
殿の行動は予測不能だった。
しばらく行くと木々がなくなり、ぱっと開けた空間に出た。
「あっ……」
小さく声を上げたわたしを振り向くと、殿は口を小さく歪めて微笑んだ。
「お前が好きなら、ここに連れて来てやろうと思ってな」
そこには一本、忘れ去られたように咲く山桜の木があった。
ねねさまと見た桜と同じように、はらはらと花を散らせていた。
「見てみろ」
木の側に立ち、殿の指差した方を見ると崖になっていて、そこからは城下が一望できるようになっていた。
「ここは俺しか知らない。俺だけの場所だ」
この清州の城に来てからずっと、城を抜け出してはこの山桜の下で考えを巡らせてきたのだという。
「そのような場所にわたしを?」