俺色〜ある草食系男子の日々
カズマは小さく息を吐き出してから、
すっかり暗くなった窓を眺めて言葉を続けた。
「病院の先生がいったんだ。陽菜が忘れてるって言うことにも意味があるんだろう、って。今忘れてる記憶は、今の陽菜にとって忘れたほうがいいとあいつ自身の体が判断してそうなってるんだって」
「・・・・・・」
「だから・・・今はそっとしてやりたいんだ」
「けど、そうだとしても・・・そうだとしてもあいつはどうなるんだよ・・・」
陽菜ちゃんに会いたくて苦手な仕事も頑張ってやってた陽斗の姿が思い出された。
あいつ、彼女に会える日は体中が跳ねるようにピアノを弾いてたな。
カズマは静かに続けた。
「陽斗には、もうそれを話してある」
「・・・だから・・・・・っ?」
陽斗が・・・納得したわけがようやくわかった。
あいつ・・・・・・離れることで彼女を守ろうとしてるんだ。