その日、僕は神になった
 私が神の異変に気付いたのは、第六代目東地区神の発表が行われた時だった。現神の名前が呼ばれたあの瞬間の屈辱は、一生忘れはしないだろう。だからこそあの時の光景は瞼の裏に焼き付いている。神の発した一言一言を、ビデオを再生するかのように思い出せる。
『え~っと、すみません、六代目…東地区神っていうのは、芝居か劇の役…ですよね?』
『芝居でも劇でも、ドラマでもないなら何でしたっけ?神なんて、空想上の存在じゃないですか?』
 周りはユーモアと受け止めたらしいが、私は騙されはしない。神に就任する前の奴は、そんな冗談を言うようなタイプではなかった。時には冗談の一つも言ったかもしれないが、あのような場でつまらない冗談を飛ばすような性格ではなかった。
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