その日、僕は神になった
「神、落ち付いて下さい。一体何が起こったと言うのですか」
 レイチェルの瞳は、僕の動揺を鎮めようとするかのように冷たく光っていた。
「僕は精一杯神経を尖らせ、何も悟られないように努めたんだ。なのに…」
 なのに?レイチェルは幼子をあやすような口調で僕を促した。
「奴は去り際に言い残したんだ、あなたはローリングストーンズ派だった、決してビートルズ派ではなかった…、って」
 レイチェルの瞳から冷たい光が消え失せた。フィラメントの切れたブルーライトのような瞳は、すっかり生気を失ってしまっていた。
「私が、軽率にビートルズなどを勧めてしまったから…。いえ、神に呼ばれた時に、何よりも優先して神の下へ駆けつけるべきだったのです」
「レイチェル、君のせいじゃない!頼りの君がそんなんじゃ、僕は一体どうすればいいんだ?それに奴は、僕の部屋に入った時から気付いていたんだ、防ぎようがなかった…」
 彼女の両肩に乗せた腕で、彼女の肩を必死で揺すった。だが彼女はジッと床を睨みつけ、舌唇を噛み締めていた。
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