その日、僕は神になった
 ドクン、その表情を目にした時、僕の胸は大きく一つ高鳴った。
 まただ…、この表情もまたどこかで見たことがある。これはデジャビュなんて不確定要素に満ちた現象ではない、僕は確かにこの表情を見たことがある。
 呆然と立ちすくむ僕に気付き、彼女はその視線を持ち上げた。
「どうか致しましたか、神」
 なんでもない、なんでもないんだ、僕はそう言って続けた。
「それよりも、今はこれからをどうするかを考えなきゃ。きっと奴は僕の身に何が起きたかを探ってくる筈だ…」
 神の候補として挙げられた程の男だ、その優秀さは言うまでもない。僕はまた一つ大きな問題を抱えることとなった、失った記憶、その記憶を奪った犯人、そしてその秘密に気付き始めた元ライバル…と。
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