その日、僕は神になった

　だが同時にこの推理に間違いがないという確信も持っていた。俺が斉藤楓真だとしたら、この体の持ち主、アムーフとは一体どんな人物だったのだろうか？人間界に住民票があるように、天界の住民のデータもどこかで管理されているのではないか？そう考えた俺は、資料庫の中を探したのだ。そしてその予想は見事的中し、俺は想像よりもずっと容易く、この体の持ち主の正体に辿り着くことが出来た。
　なぜ最初からこんな簡単なことに気付かなかった？そうすれば今とはまったく異なる展開を覗かせていただろうに。今だからこそそんな風に思えるが、当時はそこまで頭が回らなかった、そしてそれだけ俺はレイチェルに全面の信頼を寄せていたからだろう。
　そしてその資料の中には、新たな事実が隠されていた。この体の本当の持ち主の名は、アムーフなどではなく『スバル』、であると。驚かなかったと言えば嘘になるが、もはや気が動転するようなことはなかった。ここまでくれば、偽名の一つや二つは大した問題ではなかったからだ。だが、なぜレイチェルは偽名を教える必要があったのか、そう考えた時に、斉藤楓真、楓真、そしてアムーフと言う名に隠されたトリックに気付いたのだ。