その日、僕は神になった
 その時に俺はレイチェルに書かれた資料も確認した。その行為はとてもやましい行為に思えたが、もはや誰も信用することの出来ない事態だ、信じられるのは己のみ、ならば全てを自分の目で確認する必要がある、そう決心したのだった。
そこに書かれていた彼女の名、経歴、それらに偽りは一切なかった。だが俺はその資料の中で一点、自らの目を疑うこととなった。彼女を写した写真には、奥二重の瞳に少し潰れた鼻ではない、クッキリとした二重の瞳に、絶妙な曲線を抱く鼻梁、他の天界の住人と比べても、勝らぬとも劣らない絶世の美女の姿がそこには写し出されていたのだ。その時の俺は覚醒状態にあったのだろう、その理由にもすぐに思い当たった。
 彼女は俺に記憶を取り戻させる最大のヒントとして、その顔まで変えていたのだ。いや、正確には、俺にだけはそういう風に映るように細工をしたのだろう。急に顔が変われば、今までの彼女の顔を知る人物はみな、一斉に彼女へと不信の念を抱くはずだから。俺が初めて彼女の顔を見た時に感じた違和感、他の天界の女性に比べて見劣りしたその容姿さえも、彼女の計画の内だったのだ…。
 もはや俺の仮定は、断定へと変わっていた。だからこそ、俺は今こうして彼女を目の前にして、真実の追求をしているのだ。
「全てお話します」
 そう言ってレイチェルは固く閉ざされた口を開いた。
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