その日、僕は神になった
「そんなはずがない!現に俺は今でも人間が憎くて、憎くてしょうがない!一刻も早く神々の鉄鎚を執行して、生前の恨みを晴らしてやりたいんだ!お前らの人選は間違っていた!この計画もここで失敗だ!」
「私たちが出来ることはここまでです。神々の鉄鎚の執行に関しては、神、あなたがご判断下さい」
 レイチェルの容姿は本来の彼女のそれにいつの間に変わっていた。何人にも有無を言わせぬような美貌…。その悲しみに満ちた瞳が胸に突き刺さった。俺の胸を何度も揺さぶってきたその瞳の正体は、玲花が俺の名を呼び叫んだ、あの時の瞳と一緒だった。
「レイチェル、最後に教えてくれ…。君は先代の意志を継ぎ、その計画通りに動いていただけなんだね?」
「はい。私にはこのような計画を立案する程の知恵も、ましては遂行する程の能力も持ち合わせていません」
 そうか、そう呟き、きつく目を閉じた。俺はレイチェルに騙されていた訳ではない、先代の神に騙されていたのだ…。そう信じ込むことが唯一、心の慰めになるような気がした。
< 247 / 368 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop