その日、僕は神になった
 それでも俺が迷っているのは、彼女の言葉が引っ掛かっているからかもしれない
「あなたは誰よりも人から愛されることのない悲しみを、孤独を知っていた。だからこそ、それと同じくらい人を愛する力が、優しさが芽生えていたのです」
 人を憎むということは、同じくらい人を愛するここと比例する、そうとでも言うのか?その逆は言えるかもしれないな…。人を愛することは、同じくらい人を憎むことと比例する。一見同じ意味でしかないが、それは生と死、静と動、光と闇のように、対照的な位置に属しているように思えた。そうだ、そうとしか思えない。彼女の言葉は、俺に神々の鉄鎚を阻止させるタメの狂言でしかないのだ。そこまで分かっていながら、俺はなぜ悩む必要があるのだ?それは俺が斉藤楓真としてではなく、アムーフとしてレイチェルという女性を一度でも愛してしまったからなのか?その女性から、これ以上ないというような仕打ちを受けたにも関わらず、それでも尚、彼女のタメにと思っているからなのだろうか?それでは彼女の言葉を肯定しているようなものだ。
 俺は同じ轍を二度踏むのか?
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