その日、僕は神になった
 辺りは静かだった。深夜の病院が騒がしいというのも変な話だが、それにしても奇妙な程の静寂に満ちていた。時計が時を刻む音が、踵がビニールの床に叩きつける音だけが、真暗な廊下に響いていた。
 玲花はどうなったのだろう?彼女は同じ病院に搬送されたはずだ。モニターが素早く切り替わり、ベッドの上に横たわる彼女の姿が映し出された。彼女は倒れた時に左足をアスファルトに打ち付けたが、幸い骨にヒビが入った程度で済んだ。だがギブスで固められた左足は、今も尚、全身にメスを入れられている俺の姿よりも、痛々しく見えた。フランケンシュタインに傷の一つや二つが増えたとしても、誰も気に止めないが、白雪姫に掠り傷一つでもついたらどうだろう?たちまち七人の小人が騒ぎだす。
 静かな寝息を立てている彼女は、病院に搬送され駆けつけた両親の姿を見るなり、錯乱状態に陥った。事故のショックと、罪悪感からだろう。そのため今は安定剤を打たれ眠っている。
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