その日、僕は神になった

　手術中という赤いランプが消えた。重々しい扉が開かれ、担架に乗せられた俺が出てきた。そしてその後に続くようにして、執刀医と思しき男が姿を現した。両親は立ち上がると、彼に飛びかからんばかりの勢いで近付いた。
「先生、楓真は、息子の容態はどうなんですか！」
「お父様ですね？落ち着いて聞いて下さい…、私たちは全力を尽くしました。今現在とれる、最高の医療技術を注ぎました。後は…」
「後は！」
「息子さんの生きたいという思いを、信じるしかありません…」
　お袋はその場に膝から崩れ落ち、獣のような雄叫びを上げた。親父は執刀医の胸倉を掴むと、力一杯に揺すりながら何かを叫んでいた。
「お前らは…だろ！命を…ことが仕事だろ！何とか…よ！」
　滑稽だった。滑稽としか映らなかった。
「何だよ今更…、お前らは今まで俺にどんな仕打ちをしてきた！忘れたとでも言うのか？それを今更親面しやがって！ムシがよ過ぎるんだよ！下手な演技なら止めろよ！」
　俺はモニターに向かって罵声を浴びせ続けた。届くことないと分かっていても、止めることは出来なかった。