その日、僕は神になった
 事態が動いたのは突然のことだった。細波のような曲線を描いていた心電図が、どこまでも続く水平線のような直線に変わった。ツーという機械音が俺の心臓停止をみなに知らせたのだ。人の命なんてあっけないものだ、そんな機械音が死を知らせるのだから。
 辺りは急に騒々しくなった。複数の医師が俺を囲み、電気ショックを押しつける。俺の体は大きく痙攣するようにベッドの上で跳ね、その一瞬だけ心電図が再び細波を起こした。そんな光景が何度も繰り返された。
 お袋の、玲花の叫び声が狭い室内に響く。親父はそんなお袋の傍らで俯いていた。
 俺の体が跳ねる、心電図が細波を起こす…。
「先生、もういいです…。これ以上は、この子が可哀そうだ」
 涙で擦れた声で、親父が呟いた。
「あなた!」
 お袋のヒステリックな叫び。
「楓真は十分闘った!もう、ゆっくり休ませてあげよう…」
 お袋はその場に崩れ落ち、再び甲高い泣き声を上げた。
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