その日、僕は神になった
 結局何のアイデアもないままにその日を迎えることとなった。そう、天界の住人が一同に集まり、神々の鉄鎚への賛否を問う日が。結果は火を見るよりも明らかだ。誰も神々の鉄鎚に異論を唱える者も、ましては反対の票を投じる者はいない。形式的に行われるものでしかないのだ。
 緊張していないと言ったら嘘になるし、出来ることならば今すぐに逃げ出したい。その半面開き直ってもいた。ここまできたら後はなるようにしかならない。なるようにしかならないならば、俺は先日のレイチェルの言葉を信じる、俺ならば天界を、人類を救えると…。
 中央神殿の大会議場、天界の住人四百名が一度に収容出来る、天界でも一番の広さを有する会議場だ。俺がこの部屋に足を踏み入れるのはこれで二度目だ。一度目はそう、第六代目東地区神就任の挨拶をした時だ。あれからいくらも経ってはいないのに、随分と昔のことのように思える。それだけ濃い日々だったということだ。あの時は何も分からないまま東地区神の席に座らされた。そして今は、自らの意志でその席に座った。
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