その日、僕は神になった
「賛成票…、三百九十八。反対票…、二」
 場内は一気に混乱の渦に飲み込まれていった。それぞれがそれぞれを疑心暗鬼の目で睨みつけ、二人の反逆者を見付けだそうとしている。その中でただ一つ、真っ直ぐに俺へと向けられた視線があった。カムイ…。その口元は僅かに歪んでいた。とうとう化けの皮を剥いだな、その目はそう言っていた。
「反対票を投じたのは、この私だ」
 俺は立ち上がり、高々と名乗り出た。三百九十七の視線が解せない、と言った表情で俺を見つめ、一つの視線が嬉々とした表情を向け、一つの視線が交差した。俺の視線の先には唯一の味方、レイチェルの姿があった。立ち上がり、もう一人の反対票を投じた者の正体を晒そうとする彼女を、俺は右手で制した。こんな視線の的となるのは、俺一人で十分だ。
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