その日、僕は神になった
「今の人類をこのまま野放しにして置くことがですか?己の欲望のままに生き、そのために争いを続け、殺し合い、奪い合い、便利さを求めるがあまり環境を顧みずに、自然を破壊し続ける、そんな人間を野放しにして置くことが正しいと言うのか!」
「そうではありません!…ですが人々はその過ちに気付く度に、自らの行いを悔い、改めようと努力している。
 私は信じたいのです、いつか、いつの日か彼らが、二度と同じ過ちを犯さない日が来ることを!」
「東の神、あなたのおっしゃられることは素晴らしい。だがそれは理想を掲げているだけなのです。そして私たちには、その理想が実現する日を大人しく待っている程の余裕は、もはや残されていないのです。その理想の実現は、次の人類に託しましょう」
 それではダメなのだ。それでは玲花やお袋、親父を救えない。だがこれ以上なんと説得すればいい?俺が並べているご託など、先代がすでに並べてきたはずだ…。
 押し黙る俺の様子を見て、口を開いたのは西の神だった。
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