その日、僕は神になった
「私の担当する東地区、日本でとある青年に強く興味を惹かれました。その青年はこう叫んでいたのです、神なんてクソくらいだ。俺が神になった方がマシな世界になる、と」
 いつだったか、そんなことを俺は叫んでいたな。まさか本当に神になっちまうなんてな…。あんなこと言わなければ俺は今、こんな目に合わなくても済んだかもしれないのに。
「その青年は容姿にも、何の才能にも恵まれないばかりか、両親や友人といった対人関係にも一切恵まれていませんでした。
 もちろん彼が本当に神になりたいとも、その神の存在を本気で信じていたとは思いません。
 彼は自分の置かれた理不尽な境遇に対する怒りの矛先を、何かに向けたかったのでしょう。そしてそれが神という、いるかいないかも分からないが、いるとすれば絶対的な力を持った対象に向けられたのでしょう」
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