その日、僕は神になった
 そう、俺は俺の中に蟠った、怒りの刃を何かに向けたかったのだ。俺は何一つ悪くない、そう自分自身を正当化するために。悪いのは俺じゃない、その責任を誰かに押し付けるために。自ら何かを変えようとはせずに…。
「それがどうしたと言うのですか?それが人類に肩入れする理由なのですか?」
 俺は北の神の言葉を無視して続けた。
「彼はその容姿から虐めに遭い、心はどんどん醜く歪み、そんな姿を見た両親にもやがて匙を投げられるようになりました。そのことが彼を、更なる闇に追い込むことも知らず…。
 そして彼は見つけたのです。その刃を具体的に誰に向ければいいのかを。それは彼の両親です。彼はこう考えたのでしょう、自分がこんな境遇にさらされているのは、醜い容姿と何の取り柄もない脳のせいだ。ならば原因は誰だ?親だ。あいつらがもっと優秀な頭脳と美しい美貌を持っていれば、俺がこんな風になるはずがなかった、と…。
 似ていませんか?誰かの考え方に。
 彼の考えも分からなくはありません。ですが彼は逆恨みをするだけで、自ら何かを変えようと努力をしたでしょうか?容姿を変えることは難しい、何もそういうことを言っている訳ではありません。
 ただ、彼にも出来ることはあったはずです、努力次第で変えられることはあったはずです。
 例えば対人関係など…」
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