その日、僕は神になった
 俺は頬を伝う雫を拭いながら、感傷に浸っている場合ではないと、自らを叱咤した。
 まだやることはある。レイチェルの潔白だけは、何としても証明しなくてはならない。だがそんな方法があるのだろうか?彼らは徹底的な調査に乗り出しているはずだ。そこに抜かりがあるとは思えない。ならば必然的に全ての真実を突き止めるはずだ…。
 同じ天界の住人としての恩情がかけられ、最悪の事態だけはどうにか免れないだろうか?いや、彼らはそんな甘くはない。裏切り者には容赦ない鉄鎚を下すことだろう。先代、第五代目東地区神のように…。
 俺は誰一人救うことが出来ないのか。レイチェルにいたっては、俺自身がその窮地に追い込んでしまった。彼女が先代の計画に賛同した時点で、その最悪の事態を想定し、受け入れる覚悟が出来ていたのかもしれない。だがそれが慰めになるだろうか?そんな訳がない。彼女の覚悟うんぬんの問題ではないのだから。
< 320 / 368 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop