その日、僕は神になった
 俺の淡い期待は綺麗に消えた。泡のようにパッと消えた訳ではない。北の神の一言一言を聞くたびに、徐々に消えていったのだ。陽が傾き、光源を失い消えていく虹のように、徐々に徐々に…。地平線に消えた太陽の後に待つのは、闇だ。全てを飲み込む闇。今更彼女の無実を訴えたとしても、誰一人として耳を傾けるはずがない。俺はその闇に飲み込まれ始めていた。
 敗北感…、結局誰一人として救うことが出来ないのか。間もなく北の神から、彼女への処罰が言い渡される。その時俺に何が出来る?何をしてやれる?もう何も出来ない…。俺は暗闇の中で、一筋の光を探してもがくことすら諦め始めていた。
 北の神は一度場内を見渡し、その静寂を確かめ、再び口を開いた。いよいよだ…、緊張に身を固めた。
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