いも☆こん
 
「そんなに楽しいの、そのゲーム」

日頃から窓際の後ろの席で、目立たぬよう密やかなオタトークを楽しんでいた俺達だったが



無理もない



久しく没頭できるゲームがなかったのだ。

あまりのハマりように、声のボリュームをうっかり下げ忘れていた。


「ねえ、楽しい?」

「あ、ああ…マニアには堪らない感じで」


朝川雅美(アサカワ・ミヤビ)

絶対この手の話題に興味を示さないであろう人物が、ヤケに俺達の会話に食い付いてきた。


「マニア?どんなゲームなの?」

どんなゲーム……





日々成長してゆく妹を熱く見守る





……って、言えるワケねえし


「あ、いや、その……」

「さっき妹がどうとか聞こえたけど」

「……そうなんですよっ。人生ゲームの親戚みたいなゲームでして」

全然ちげー

「自分の好きな家族構成を作ってモエ」

「モエ?」

「モッ…燃えるゴミの日の当番とか、掃除や洗濯や料理の分担を決めたり」

どんなゲームだよおい

「とにかく擬似家族ごっこみたいな。現代の薄情な核家族に愛というメッセージ性を投げ掛ける……そんな素晴らしいゲームです!」



もう最後の一文しか合ってないし



「そうなんだぁ…」

「たぶん朝川さんには興味のない代物ですよ」

「そんなことない!」

「……へ?」

「私も一人っ子なの」

「……はあ」

「昔から妹や弟がいたらどんな家族だったのかなぁ……なんてね」

「そうでしたか」

「だから、ちょっと興味あるかも」

エッ

「やってみよっかな、そのゲーム」



期待に添えないと思いますが





……でもまあ、やるかやらないかは本人の自由なんで

止めませんよ、むしろオレは。
 
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