星に願いを
「魔王、まだ怨んでんのか? 妻と娘を寝とったこと」
フラムは頬を緩めて、魔王に甘い口調で語り掛ける。
そして、彼は空を仰いだ。
何も見えない、霧の部屋だ。
フラムは悪魔としての位は中級である。しかし実力はかなり高く、多大な戦力として活躍していた。
ただ、整った顔付きと美しくたくましい肉体を併せ持ち、艶やかな声で数多くの女体を誘惑し、楽しんでいた。
遂には魔界を治めている魔王の妻、更には娘と関係を持ったことが問題となって、今に至る。
「当たり前じゃ。お前なんぞいらん。人間となり短き寿命を全うするが良い」
「……“人間”か」
「あぁ、そうだ。必ず訪れ、絶対抗えぬ“死”の存在に怯える日々を過ごせば良い」
フハハ、と何とも嬉しそうに魔王は笑う。
現魔界の王、魔王。
先代魔王に目を掛けてもらい、重用されていた。
先代の意志を継いだ幼き王の有能な補佐役は仮の姿であって、
遂には乗っとることに成功した、シンデレラストーリーの主人公だ。
フラムは奴が嫌いだった。