しかし可奈子は違った。

「駄目よ、レオナルド。そんなんじゃ貴方は、いつまで経ってもゴブリンのままね」

可奈子は冷たくそう吐き捨てた。

「当然だ。人ひとりの命を……」「違うわ! レオナルド!」

可奈子が割って入る。

「確かに貴方は百年二百年先を見通せる目を持っていた。

有り余る才能も類い稀なる発想力も!

けれど貴方には無かったの。『愛する心』が!」

レオナルドは可奈子にそう言い放たれ、しどろもどろになりながらも反論した。

「そ、そんなことはない。私は自然を愛していた『絵画のモデルとしてね』いや、違う。弟子達や友人も愛した『配下としてね』そんなことはない! サライを、ジャン・ジャコモ・カプロッティを生涯愛したじゃないか!『所有物としてね!』違う、違う違う。違うんだ!」

まるで駄々をこねる子供のように、イヤイヤをしながら地団駄を踏むレオナルド。


< 100 / 199 >

この作品をシェア

pagetop