「それはそうとして、どうするんだ? これ」

俺は倒れたままのゴブリンを小突きながら可奈子に聞いた。

「暫くそっとしといてあげましょう」

「あ、可奈子……花……」

「なあに? がっちゃん」

「ん? い、いや。なんでもない……」

俺は目をこすって彼女をもう一度見た。優しげな眼差しをゴブリンに落としている可奈子の周りに、色鮮やかな花々が咲いているように見えたからだ。

しかしどうやらそれは、目の錯覚だったようだ。

「うっ、ううっ」

すると程なくして、ゴブリンが目覚めた。

「おはよう、レオナルド」

「私は気を失っていたのか」

ゴブリンはふるふると頭を振りながら身体を起こす。


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