「そうよ。それで貴方、少しは身にしみたのかしら……」

ゴブリンを小馬鹿にしたような物言いだが、その実その声音からは心底レオナルドを心配しているのが読み取れる。

「ああ。気を失っている間、私は夢を見ていた。いや、あれは記憶の再生だったか……」

ゴブリンは目を閉じ、頭をかかえて回想している。

「確かに私は慢心していた。

地動説を考え付いたのは、人智の及ばない、この世で最も優秀な頭脳を持っている私だからこそという自負が有った。

実際コペルニクスが地動説を唱えたのは、私より遥か後になってから。

私の様々な学説は、赤子の手を捻るより容易く学者達を黙らせた。

『自分は神なのかも知れない』と思っていたのも確かだ」

するとゴブリンはまた、カッと目を見開いて可奈子を見据えた。


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