「三塚巡査ぁ、どうやって描いたらいいか解らないんですけど、見本のスケッチを描いて貰えませんかぁ?」

……!

み、見本を?

ほほほ本官がっ?

マズイです。

これは由々しき事態です。

国家存亡の危機です。

本官は何が駄目って美術が大の苦手なのです。

学業の方も胸を張れる訳ではありませんが、こと美術と技術・家庭の悲惨さと言ったら、その比ではないのです。

その時本官は頭の中が真っ白になって、ただ呆然と立ち尽くしていました。

「三塚巡査……三塚巡査ってば」

何度も本官を呼ぶ声にも、やっとのことで反応出来た程でした。


< 164 / 199 >

この作品をシェア

pagetop