「いや、ほら。本官はスケッチブックもないし」

何とかこの場を切り抜けようと必死です。

「僕のを一枚あげますよ」

さ、サイブー! 余計なことをするんじゃない!

「何怖い顔してるんですか? ああ、一枚じゃ足りませんか」

なんと三枚も破って寄越したのです。

「い、いや。クレヨンも無いし」

「京子が描き終わったみたいですよ」

だから余計なお世話だと言うのにぃぃぃっ!

本官の事情も都合も知らず、準備万端。全てが整ってしまいました。

しかも!

まだスケッチ途中の生徒たちまで本官の周りに集まり始め、その視線は本官の一挙手一投足を逃すまいとばかりに注がれているではありませんか!


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