「へへへぇぇ。いや、本官だっていつもこんな贅沢してる訳じゃないし。でも手伝って貰ったし、何より『同志』だしね!」


 彼との出会いは余り好ましい物じゃなかった。職務質問でやはりここに招かれ、いや引きずり込まれたと言った方が正しいだろう。

 狭い道路沿いに有る小学校の正門を守るようにして建てられたここの前を、何日も食事を摂っていない状態、つまりへろへろのフラフラで通り掛かった時にそれは起こった。

 丁度その時期、小学生に対して猥褻な行為を働いていた変質者と特徴がそっくりだったんだと言う。


「最初は同志と言うより犯人扱いでしたけどねっ」

「それを言わないでくれよぉ、悪いと思ってるんだからさぁ」

「でもその後はずっとお世話になりっ放しで。

 あの日ご飯を食べさせて貰えなかったら、朦朧としたままの意識で……今頃はきっと死んでるか塀の中ですよ」


 空腹を抱えたまま、思考も虚ろな状態をあれ以上続けていたら、何が起こったとしても不思議じゃなかったろう。


「そうかなぁ……本官が自分のココアを入れて、おたくにコーヒーを入れようとしたら、すぐさま『俺にもココアを下さい』って言ったんだよ? 観察眼も判断力も有ったと思うけどね」

「そうでしたっけ。ははは」


 結局取り調べの最中に真犯人が捕まって、俺は無罪放免(食事付き)となったんだ。


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