「解ったよ。ココアでも飲むかい? ああっ、牛乳が無いな」


 三塚さんは鴨下さんと顔を見合わせて「ヤレヤレ」とばかりに俺をあしらおうとしているのが解った。

 確かに以前、勘違いで大騒ぎをして、この2人にもそれは多大な迷惑を掛けた。でも今回はそっちからの要請も有った訳だし、実際今犯人は俺が確保しているというのに。


「話を聞いてくれないんなら他の交番に行きますっ」

「解ったよ。放火犯でも捕まえてくれたのかい?」


 目を瞑って大きく頷いた俺を二度見して「何ぃ?」目を見開く三塚さん。


「なんでそんな大事な事を早く言わないんだ!」

「言おうとしてたのに、まるで聞いてくれなかったんじゃないですかっ!」


 立ち上がって交番から立ち去ろうとする俺の二の腕に縋りながら、態度をガラリと変えた三塚さんが言う。


「スミマセンでした。是非最初から聞かせて下さい」


 机に突っ伏して頭を下げる三塚さんに免じて、俺は事の顛末を話した。



──────────────



「そりゃノンビリしちゃ居られない。急ぎましょう」


 俺達3人は現場へとひた走った。

実際足で走ったのは、最初まともに取り合ってくれなかった鴨下さんで、俺と三塚さんは自転車でその場に急行した。


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