広瀬さんのお陰で元気を取り戻した俺は、精力的にニュー御殿の製作に勤しんだ。

心地好い疲労感に包まれながらいつもの岩で寝転がるが、今日は厚い雲に覆われて夕焼けショーを観覧する事は出来ないでいた。


「あ、あれはこないだの……」


 横になったままふと橋の上を見やると、長い髪をなびかせて女の子が川面を見詰めている。空が暗くなり、一斉に明かりをともした街灯に照らし出された彼女は、まるでスポットライトを浴びたように輝いていた。


「お、よく見ると随分綺麗っぽいな」


 クッキリと影をなすその鼻筋は、遠目からでも上品そうに見える。細い身体に比べても尚、その顔は小さい。スラリと伸びた首にチョコンとそれが乗っている様はまるで、フランス人形のようだった。


「でもどうしたんだろう、酷く寂しそうだ」


 前に見掛けた時は余りに夕陽が美しかったので「彼女もそれに見とれたんだろう」としか思っていなかったが、表情さえ窺えないこの状況で、あんなにも寂し気なオーラを放っている彼女を見ると、あの時も悲しみに暮れていたのではなかったかと思いを巡らす。


「まさか飛び込むなんて考えてないよな!」


 慌てて飛び起きて彼女を探したが、またあの時のように忽然と姿を消していた。


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