「さ、逆夢って言うんだよな、こういうの」


 まだ高ぶったままの動悸を深呼吸でねじ伏せながら、俺は呟いた。枕元に有ったミネラルウォーターのペットボトルを飲み干してみても、喉の渇きは治まらない。


「そうさ。あの時に思い留まってくれたじゃないか……俺の超能力で」


 そう改めて口に出すと、今まではまるで信じていなかったそれに頼っている自分が、酷く滑稽に思えてきた。


「ふは、ふゎはは。偶然だよ。もし超能力が有ったとしたら、さっきの夢は『予知夢』になってしまう。

 ……有り得ないさ」


 そうやって自分を落ち着かせようと試みるけど、えもいわれぬ嫌な感じに身体が支配されていて、再び目を閉じてみてもまるで眠気が起こらなかった。



──────────────



「雨か……」


 折角夜更かしをしたのだから「また朝日からエナジーを享受すれば気分も晴れる」と思っていた俺は、それが叶わない事を知って余計に胸があわ立っていた。

 そんな、身体にまとわり着いた焦燥感のような物を洗い流す為に俺はシャワーを浴びる。

シャワー室の合鍵は持っているので、いつでも好きな時間に浴びられるのは幸いだった。


< 37 / 199 >

この作品をシェア

pagetop