やっぱり超能力なんか有りゃしない! 神も仏も助けてはくれなかった。こうなったら俺が、いや俺しか彼女を助けられないんだ。

暫く泳ぐと手の届きそうな所迄やっと近付く事が出来た。彼女は身体に服がまとわり付いて、今にも溺れそうになっている。


「ぷ、あぷっ! 助けっプハッ!」


 人の気配が解ったのか俺の姿が見えたのか、彼女は必死に縋り付いてくる。


「ほ、ほらっ! こっ、これに掴まれっ!」


 抱えていた2リットルペットを2本渡して、彼女の首根っこを引っ張り岸を目指す。


「もう大丈夫だ、そのまま力を抜いて」


 ラッコのように浮かんだ彼女の襟を握っているので、彼女からは俺が見えないだろう。だが元々泳ぎが得意とはお世辞にも言えない俺は今、それこそ死にそうになりながら岸を目指しているのだ。



──────────────



「どうだい? 落ち着いた? ……寒くない?」


 俺は彼女に(なけなしの)ココアを甘めに淹れてあげて、取り敢えず落ち着いて貰う事にした。


「ええ、温まりました。このココア、とても美味しいです。私だけ頂いちゃってよろしいんですか?」


 そりゃ俺だって飲みたいさ、大好物だもの!


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