この人は運命の王子様に違いない、との所謂直感をその男に感じた彼女は、一刻も早く交際をスタートさせたい気持ちで一杯だった。


「では、最初のデート場所は系列店のこちらから選んでいただきます。そこでお互いを気に入られた場合は自由交際で……」


「はい、解りました。宜しくお願いします」


 彼女が頭を下げると、書類をまとめていた担当者は付け加える。


「会規にもございますが、自由交際に発展した場合は自己責任にてお願いします。退会迄は料金が発生致しますので、当会が不要の際にはその旨ご連絡下さい」



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「それからはトントン拍子に話がすすんで、アイツ……弘二って言ってたんですけど、その弘二をどんどん好きになって行ったんです」


 そこ迄話を聞いて、もようしてしまった俺は小用の為に中座した。


「ぶるるっ、すっかり冷えちまったよ」


 暖められた小便が全て放出されると、その熱量を補うべく身震いする身体。気付けば夜もすっかり更けていた。


「ココアもう一杯いかが?」


 俺に取って貴重なそれではあったが、背に腹は変えられない。もう二杯分のココアを作って彼女と一杯ずつ飲んだ。


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