「でもペットボトルには驚きました。あんなに浮かぶなんて……。機転がお利きになるんですね」


 彼女が顔を輝かせて俺を見る。ここに電気が点いてたら、もっとはっきり見る事も出来るのに……。


「いや、ペットボトルならいつも転がってるからさ。却ってモタモタしちゃって苦しい思いをさせちゃったね、ごめん」

「そんな事無いです。あれが有ってホント、助かりました」


 事情を話した事でスッキリしたのか、彼女は明るくなり、俺達はとりとめも無い話で盛り上がった。


「あの……」


 一頻り話してわずかな間が出来た時、彼女はそう切り出してくる。


「この度は助けて頂いて有り難うございました。お礼を受け取って頂けますか?」


 ポケットから引っ張り出されたのは濡れて形の崩れた封筒だった。


「私の全財産です。今はもうこれしか無くって」


 そんな物を差し出されても貰うわけにはいかない、見た感じ、結構厚みも有る。俺は「こんなの貰えないよ」とつっ返した。

 すると彼女は照れ臭そうにもう一度封筒を差し出すと言った。


「確かに全財産なんですがこれ、宝くじなんですよ。でも当たったら3億円です」


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