「今日も生きていられた事に感謝だ。相変わらず腹はペコペコだけど、眠れば何とか誤魔化せるさ」


 そうひとりごちて頭を拭きながらシャワールームを出ると、思わぬ朗報が舞い込んだ。


「いよっ! 丁度良かったさぁ。今日の現場でサッシが山程出たから、きれいにして売ってきたらいいさぁ」


 俺より5個位若い大城君だ。いつもこうして俺に分け前をくれる。

 解体してきたアルミサッシに付いている金具やコンクリート等を取り除くと、アルミとしての価値が上がって引き取り単価も跳ね上がる。

俺はその労働の対価として50%の分け前を貰う訳だが、ただそれが半分に迄値するかは甚だ疑問で、これは「ホドコシでは無い」という建前で、俺に余計な気を遣わせない配慮だと思う。


「有り難う大城君。きっちりいい仕事するね?」


 早速俺は駐車場の裏に回る。

軍手をはめ、ハンマーとドライバーを傍らに置くと、山と積まれたサッシと対峙する。


「これは大物だ。明日は久々に肉が喰えるかも」


 鼻歌を歌いながらハンマーを振るい、ドライバーで余計な金具を外していく。

 嬉々として作業を進める内に興に乗ってしまい、気付けば辺りはすっかり暗くなっていた。


「月が余りに明るくて、暗くなってたのにも気付かなかったよ」


 今日は丁度十五夜なのか、真ん丸のお月様が青白く輝いて闇夜を照らしていた。

夕方に有った雲もすっかり晴れて、少し冷たい空気がより透明度を増して澄み渡っている。


< 5 / 199 >

この作品をシェア

pagetop