「え? え? に、二億……?」

「当然でしょ? 私が前後賞の5千万ずつで一億なんだから……私に隠すこと無いじゃないですか」


 突然そんな事を言われても、俺は何が何だか解らなかった。彼女がお礼にとくれた、あのグショグショの一枚が二億の当たりクジだったというのだ。

 ああ、余りの事に頭がクラクラする。


「あれさ、あのクジ。あれ……橋の下御殿竣工のどさくさに紛れて何処かへ行っちゃったんだ」


 こんなにクラクラするのは、彼女の眩しい水着姿に当てられている所為もあるだろう。


「えええぇぇえっ!? 二億円ですよ? 二億円! 探しましょう! 今すぐにでも!」


 彼女はさっき溺れかけた人とは思えない程俊敏に立ち上がり、俺の手を引いて医務室を出ようとする。


「ちょっ、ちょっと待ったっ!」

「待ちません! 行きましょう!」


 彼女が我を忘れて俺の手を引くものだから、いつの間にかその小振りな胸に腕が食い込んでしまっていた。


「ねえ、胸っ! 胸が当たってるってっ!」

「……………キャッ! ごめんなさいっ」


 彼女は赤面し身体を縮こまらせてまた、備え付けの簡易ベッドに腰掛けた。


「本当に有り難いんだけどね、もう橋の下御殿は解体済みなんだよ」


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