手に取ったタオルと俺を交互に見ながら戸惑っている可奈子に言うと、

「ああ、すいません。気を遣わせてしまって。でもそうですね。使ってた汗拭きタオルを渡されたらイヤかも、フフフ」

微笑みながらタオルをあてがう仕草が堪らなくおしとやかで、思ったことを素直に口にするその感性にぐぐっと来た。

「ハッキリものを言うんだな。弱ってる振りをしてるだけだったのか? ガハハハハ」

「あら失礼ね。か弱い乙女を助けに来てくれた王子様かと思ったのに」

「ガハハハハ。王子様ってがらじゃねえよ。どうだ? 冷たいもんでも」

「割り勘だったらご一緒するわ」

女を最大限利用して男に媚びるタイプとは明らかに一線を画した女だった。


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