そして昼迄サッシと格闘し、リヤカーにそれを載せるとスクラップ屋へ。分け前が1万にもなったので、俺は小躍りしながら近くの市場に行った。

ここは小売りもしてくれるし、肉・魚・野菜は勿論、文具から薬・衣料迄一通り揃っているので大助かりだ。いつも買い物客や買い出しに来た商売人で溢れている。


「うぅぅんむむ」


 日本茶好きな広瀬さんに深蒸し煎茶を、料理に必要な醤油・砂糖・その他の調味料の買い置きを購入した俺は、ここに来て考え込んでしまった。


「喉から手が出る程欲しい。しかし必要不可欠な物か?」


 その品物を前に、俺はまさしく自問自答していた。

確かに欲しい。

しかし嗜好品に出す金が有ったら、何かの時の為に取って置くべきじゃないだろうか……。

「タバコなんて贅沢な」だって? 俺はそんな物吸わないし酒も飲まない。俺が欲しいのはこの『ココア』だ。


「うぅぅぅむむぅぅう」


 かれこれ30分は思い悩んだ末に「川で壊れていないマグカップを拾えたのは、こいつを飲んでもいいという啓示だったに違いない」とか都合のいい事を言って自分を納得させた。

 最後に肉と野菜と米を買ってリヤカーで御殿に戻ると、山野内さんと大城くんが何やら運んでいる。


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