「おい魔導士。言っておくけどな、俺にはれっきとした名前が有るんだ。お前にだって有るだろ? 名前が」

召喚された双角のゴブリンは、不服そうに両肘を付いて顎を支え、ベロンと舌を出している。

「あら、ごめんなさい。私は可奈子。あなたは?」

「そうだ。まずはお互いを知るのが先決だろうよ」

途端に笑顔を見せ、背中の羽をはばたかせたゴブリン。魔物のクセに礼儀にはうるさいらしい。

「自己紹介は心を通じる第一歩だ。俺はアダッヂオ、よろしくな」

アダッヂオは赤ん坊のような手のひらを差し出して微笑み、可奈子と固い握手を交わした。

彼女と同じ、一風変わったゴブリンだったんだ。


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