その頃店は開店休業の有り様。加えてその時分からやっていた監視員のボランティアにも身が入らない状態だったので、俺は(俺と遣い魔の猫、トゥインクルは)可奈子とアダッヂオの修行に付き合わされた。

でも。

修行とは名ばかりで、それはホームステイに訪れたアダッヂオとの触れ合いみたいなモンだったけどな。

「奔放な筆遣いだなぁ、あれを見てみろよ」

ある日アダッヂオは、夏空を彩る様々な形の雲達を見て言った。

「あの立体感の有る入道雲、筆先を半乾きにして叩いたようなウロコ雲……」

アダッヂオの世界に果たしてそんな言葉が有るのかは解らないが、トゥインクルと同じように心に語り掛けているらしいから気にしないでおこう。


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